2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[520] 2004年12月16日(木)
「それは、銀塩写真の責任ではない」

ある写真サイトでデジタルカメラの画像を見た。
精細で鮮やかで階調滑らかに表現されており、デジタルカメラもここまで来たかと思わせた。
また、同じサイトにリバーサルフィルムで撮られた写真も掲示されていた。
その写真にはザラザラした粒子感があり、ハイライト部の飛びとシャドー部のくすみが気になった。しかも色が偏っており、いかにも銀塩写真らしいものだった・・・。


昔、我輩が最初にフィルムスキャナで写真を取り込んだ時、スキャン直後の画像は原版とはほど遠いものだった。 色は強烈に偏り、しかも暗くくすんでいる。
我輩は、その画像を単純に色調整し、明度を上げた。
その結果、スキャン直後とは比較にならないほど綺麗な画像が得られた。
しかし、今から考えるとそれは不十分で、見るに耐えない。

その後、我輩自身の色調整スキルも向上し、さらには今まで無頓着だったディスプレイの調整も行った。
また、画像を大きくスキャンしそれを縮小処理することによって画像を締めてピクセルを平均化させた。
その結果、それまでとは比較にならないほど綺麗な画像が得られた。
しかし、今から考えるとそれは不十分で、見るに耐えない。

その後、世に出回るフィルムスキャナも種類が増え、我輩も高性能なフィルムスキャナを求めて何度か買い換えた。それにより、色調整も変にこねくり回すことなく、単純にRGBの偏りを調整するだけで自然な色が出せるようになった。
また、ハイライト・シャドーに注意を払い、少なくとも表現したい部分だけは階調が最大限になるようにした。
その結果、それまでとは比較にならないほど綺麗な画像が得られた。
しかし、今から考えるとそれは不十分で、見るに耐えない。

その後、さらに高性能なスキャナを手に入れ、極限まで巨大な画像で取り込み、縮小処理にも工夫をした。これにより、被写体の細かいパターンに由来するモアレも軽減され、色の深みも増した。
また、ハイライト・シャドーの調整も部分的に行うことで、データの切り捨てを極力無くした。
その結果、それまでとは比較にならないほど綺麗な画像が得られた。

現時点では、これが我輩の最高画質である。
しかしながら、いつかは「今から考えるとそれは不十分で、見るに耐えない」と言う日が来るに違いない。
雑文473「現実を見ろ」でも書いたように、原版さえ手元にあれば、そのポテンシャル(秘めたる力)を引き出す能力が向上するにつれて、得られる電子画像もどんどん高画質となるのだ。
姉妹サイト「中判写真のサムネイル」では、掲載写真のクオリティにはバラつきがある。スキャン・レタッチ技術が向上するたび、少しずつ画像を入れ替えているからだ。

パソコンで電子画像を取り扱う限り、画質には必ず論理的上限がある。その画質の上限が、銀塩写真のスキャナ取り込みによる最終目標の画質となる。
しかしながら、インターネット等で目にしたスキャン画像が、その目標にどこまで到達しているのかということを考えなければ、見た印象そのままに「銀塩写真の画質は悪い」という誤った結論を出してしまうだろう。

そういう意味で、銀塩写真に触れたことの無い者に変な思い込みをさせてしまわないかと心配する。
また、銀塩写真を使っている者でも、自分の撮った銀塩写真とデジタル写真を同じ画面上でを比べて早合点してしまわないかとも心配する。

我輩は言いたい。
「銀塩写真の画質が悪いのではない、悪いのはスキャナの性能とおまえのレタッチスキルだ」と。
少なくとも、我輩はそう自分に言い聞かせて日々向上している。

「そうは言っても、最大限の努力を以て銀塩写真をスキャン・レタッチした結果が、やっとデジタルカメラの手軽な画像に並ぶというのであれば意味が無かろう。」
このように反論する者もいるかも知れない。確かに、その意見はもっともだ。

だがよく考えろ、手元にある銀塩原版はデジタル画質を遥かに越えているのだ。
いつか、画像に特化したパソコンシステム(参考:雑文143雑文144雑文502雑文508)が開発された暁には、従来のデジタル画像はその段差を越えることは出来ない。しかし、銀塩原版だけは、再スキャンによって対応出来る。時代を貫いて価値を維持出来る。

銀塩写真を唯一無二の原版として見直し、その宝を大切にしろ。